制作日記

　作品を発表しようとする都度、事前に見て頂いている方がいる。前回の発表以来3年ぶりの再会。

　見せたのは当然、次回発表予定の”終わらない劇場”シリーズ。そのビジュアルや構成については、ウィークポイントと考えていた点をほぼ想像していた通り的確に指摘された。やはり見るべきところは見られている。

　ただ今回久しぶりに話をしてみて、堪えたものがあるとすれば、どんなに仮に作品がこれから良くなったとしても、その性質上継続し続けることによって、私自身が社会的・経済的にハッピーになってゆく姿が全く想像できない。奇跡でも起こさない限り。何かそんな打算はあるのか？という目の前の現実についての話である。確かに私自身、うすうす感づいてはいる。そういう形で皆作品を創るのを辞めてゆくのだろうか。

　そういえば、ある業界紙にJuna21クロッシングカオス展についての記事があった。展示自体は銀座で見たが、正直なところ招待作家の人選が随分とばらついているな、という印象を抱いていた。続きを見たかった作家さんもいたのだが。

　その記事を読んで、おぼろげながらその理由が分かるような気がした。制作活動などというものは、様々な事情で続けてゆくこと自体が本当に困難であるという現実がある。あとは本人の意思次第ということらしい。

　ただ、少なくとも私について現時点で分かっていることは、次回の展示が断じて最後にはならないだろうということ。一太刀浴びせずにはおくものかということである。展示が終わってからも、そんな大言壮語？を吐いていられるよう、少ない絶対量の中からでも、とにかく作品の完成度を高めることに努める以外の選択肢はないだろう。

　伊香保温泉から戻って、直ちに地元の友人からの荷物をクロネコで受け取る。中身は都内に転勤で引っ越してきたばかりの同じく地元の友人に贈る引越祝いである。

　以前に中野の我が家へ泊まりに来たとき、その友人のいびきで眠れなかった私。上京独り暮らしを機会にいびきを抑止すべく、横向けに寝る習慣を身に付けるさせるべきと考えた。で、一緒に居合わせた荷主である友人と共謀し、抱き枕を贈ることにする。我ながらにして、人類愛・民族愛・流行の？友愛溢れる引越祝いである。自画自賛。

　ただし、我が眠りを妨げたる者に対する意趣返しであるからには、抱き枕は”キャラ物”以外あり得ない。

　荷主の友人にはヤフオクで何か”痛い系”のものを落札しておくよう依頼。曰く、相場は1万円オーバー。そんなに高いのかよ！そんなわけで入手をあきらめかけていたら、直前になって連絡あり。UFOキャッチャーで捕ってきた、と。おい！

　で、段ボールに梱包されたままの抱き枕を抱え、ＪＲに乗って新居に押しかける。最寄り駅に着いてから”駅まで来た。改札まで迎えに来い”とＴＥＬ。当然、ノンアポ。完全に学生のノリ。

　新居で封を開けるや、友人の呆れ顔。まだ整理が終わってもいない部屋の片隅に鎮座する、キャラ物の抱き枕。これほど迷惑な引越祝いは考えられまい。記録写真撮ってミッション完了。

　どうであれ、ようこそ華の都？東京へ。今後とも相変わらず宜しく・・・一体、いい歳こいて何をやっているのやら？？？